走ると「すねの内側」が痛い|シンスプリントと疲労骨折の見分け方を救急医が解説

走り込みが増える時期に急増する「すねの痛み」。広い範囲が痛むシンスプリントと、一点が痛む疲労骨折は対処がまったく違います。「レントゲンで異常なし」でも骨折が否定できない理由(初期の感度は12〜56%)、サッカー選手が最も警戒すべき第5中足骨の疲労骨折(ジョーンズ骨折)と足の甲の奥の舟状骨まで、救急科専門医が見分け方と受診の目安を解説します。

走ると「すねの内側」が痛い|シンスプリントと疲労骨折の見分け方を救急医が解説

【この記事の要約】 走り込みが増える時期の「すねの痛み」には2種類あります。すねの内側の広い範囲(5cm以上)がなんとなく痛むシンスプリントと、指1本で示せる一点が痛む疲労骨折です。前者は負荷の調整で数週間から戻れることが多い一方、後者は部位によっては数ヶ月の離脱や、体重をかけてはいけない期間の厳守が必要になります。厄介なのは、疲労骨折の初期はレントゲンに写らないことが多い(初診時の感度12〜56%)こと。そしてサッカー選手には、すね以外に第5中足骨(足の小指側の付け根)の疲労骨折=ジョーンズ骨折という「プロサッカーの疲労骨折の約8割」を占める天敵がいます。腰椎分離症・ハムストリング・オスグッドに続く「成長期のケガ」シリーズ第4弾は、すねと足の骨の痛みの見分け方です。

腰椎分離症(腰)、ハムストリング肉離れ(太もも裏)、オスグッド病(膝)と続けてきた「成長期のケガ」シリーズ、今回はすねと足です。

救急外来に「すねが痛い」で来る選手は多くありません。じわじわ痛くなる痛みだからです。代わりに私たちが出会うのは、「数週間前から足の外側に違和感があったが我慢していた」選手が、試合中のターンの瞬間にボキッと音がして歩けなくなった——という形です。後半で書きますが、これはサッカー選手に最も多い疲労骨折の典型的な経過で、折れる前に気づくチャンスは何週間もあったことになります。

新チームの走り込みが増え、選手権予選に向けて負荷が上がっていくこの時期は、すねや足の「骨の痛み」が増える季節です。「シンスプリントはみんななるから」で流す前に、知っておいてほしいことを書きます。

1. シンスプリントとは——すねの内側の「広い範囲」の痛み

シンスプリントの医学的な名前は脛骨内側ストレス症候群(MTSS)。すねの骨(脛骨)の内側、特に下3分の1あたりの縁に沿って痛みが出る、使いすぎによる障害です。走る・跳ぶを繰り返すことで、ふくらはぎ側の筋肉(ヒラメ筋・後脛骨筋など)が付着する骨の膜(骨膜)や、その下の骨自体に繰り返しストレスがかかって起きると考えられています。

典型的な経過はこうです。走り始めに痛み、体が温まるとやわらぎ、練習後にまた痛む。翌朝が一番つらいという選手も多い。ランナーでは13.6〜20%が経験するというありふれた障害で、走り込みが急に増えた時期——まさに新チームの夏——に集中します。

大事なことを先に言うと、シンスプリント自体は適切に負荷を調整すれば治る、経過の良い障害です。問題は、「よくあるから」とすねの痛みを全部シンスプリントだと思い込むこと。その中に、対処のまったく違う疲労骨折が紛れ込んでいます。

2. 疲労骨折とは——骨の修復が追いつかなくなった状態

骨は生きた組織で、負荷がかかると微小な傷ができ、それを修復しながらより強くなっていきます。ところが、負荷の量・頻度が修復のスピードを超え続けると、傷の蓄積が修復を上回り、骨の中に亀裂が入っていく。これが疲労骨折です。一度の衝撃で折れる普通の骨折と違い、数週間かけてじわじわ進行するのが特徴です。

高校生アスリート全体で見ると、疲労骨折は全外傷の0.8%と決して多数派ではありません。ただし部位がはっきり偏っていて、米国の高校生の調査では下腿(すね)が40.3%、足部が34.9%——つまりすねと足だけで4分の3を占めます。日本の思春期アスリート303名の調査(2026年)でも脛骨31%・中足骨28%・足根骨18%という同じ順序で、競技別ではサッカーがバスケットボールと並んで最多(21%)でした。

なお、成長期にはこれとは別枠で、腰の疲労骨折=腰椎分離症(スポーツ選手の30〜40%にみられる)があります。これは以前の記事で詳しく書いたので、今回は下半身に絞ります。

3. 見分け方の核心——「どこが」「いつ」痛むか

シンスプリントと疲労骨折(すねの場合)は、同じ「骨への繰り返しの負荷」から起きるため初期症状が似ています。診察で使われる目安は次の2つです。

  • 痛む範囲:シンスプリントは、すねの内側の縁に沿って縦に5cm以上の広い範囲に、境界のはっきりしない痛みが出ます。疲労骨折は5cm未満(多くは2〜3cm)の一点で、指1本で「ここです」と示せる。進行するとその一点が腫れてきます。
  • 安静時の痛み:シンスプリントは基本的に「動くと痛い」障害です。じっとしていても痛い・夜も痛いは、疲労骨折を疑う危険信号。「重症のシンスプリントだろう」と我慢を続ける場面ではありません。
シンスプリント(脛骨内側ストレス症候群)と脛骨疲労骨折の鑑別表。圧痛の範囲はシンスプリントが脛骨に沿って5cm以上のびまん性、疲労骨折は指一本で特定できる5cm未満の限局性。疼痛パターンはシンスプリントが運動初期に悪化し継続すると軽減するのに対し、疲労骨折は運動中持続し重症化すると安静時や夜間にも痛む。対処はシンスプリントが活動制限で回復可能、疲労骨折は画像診断と免荷が必要
見分けの軸は「痛む範囲が5cm以上か未満か」と「安静時・夜間にも痛むか」。迷ったら受診へ

「音叉を当てて響いたら骨折」「片脚ジャンプで痛かったら骨折」といった見分け方を聞いたことがあるかもしれません。しかし近年、14〜18歳のアスリート(サッカー選手を含む)をMRIと突き合わせて検証した研究などで、こうした徒手テストの限界がはっきりしてきました。音叉テストは感度5.7〜16%——骨折があっても8〜9割は見逃すので、「響かなかったから大丈夫」はまったく成立しません。片脚ジャンプは感度約70%と比較的高いものの、特異度が37%しかなく、シンスプリントでも痛くて跳べない選手が大勢います。押して痛いかどうかに至っては感度48.6%・特異度40.6%で、単独ではほぼコイントスです。

つまり、自分やチームメイトのテストで「骨折ではない」と結論を出すことはできない。見分けの目安(範囲・安静時痛)は受診を判断する材料であって、診断の代わりにはなりません。逆に、医師が問診と触診を丁寧に行えばシンスプリントの診断自体は信頼性高くできることも示されています(検者間一致 κ=0.89)。2週間以上続くすねの痛み・一点の痛み・安静時の痛みのどれかがあれば、整形外科を受診してください。

4.「レントゲンで異常なし」でも安心できない理由

ここがこの記事でいちばん伝えたいことです。疲労骨折の初期は、レントゲンに写らないことが多い。系統的レビューによると、単純X線の感度は12〜56%——つまり初診の時点では、疲労骨折があっても半分かそれ以上は「異常なし」に見えるのです。

骨の中の異変(骨髄浮腫)を骨折線が現れる前の段階から捉えられるのはMRIで、疲労骨折の診断と重症度評価のゴールドスタンダードとされています。MRIの重症度は4段階(Fredericson分類とその改変版)で評価され、アスリートを対象にしたメタ解析では、競技復帰までの平均はグレード1で約42日、グレード2で70日、グレード3で84日、グレード4(骨折線あり)で99日と、早く見つかるほど離脱が短いことがはっきり示されています。

「レントゲンで異常なしと言われたが、痛みが引かない」——このときに「大丈夫と言われたから」と走り続けるのが、最も避けてほしい行動です。痛みが続くならその旨を伝えて再受診し、MRIについて相談してください。

5. シンスプリントを放置すると疲労骨折になる?——正確なところ

「シンスプリントは疲労骨折の前段階」という説明を目にすることがあります。両者を骨への負荷障害の連続体として捉える考え方は実際にあり、危険因子も痛む場所も重なります。ただし正確に言うと、この2つが本当に「同じ一つの病気の軽症と重症」なのかは、まだ決着がついていません。2025年の国際専門家会議でも意見はまとまりませんでしたし、シンスプリントの選手の大多数は、疲労骨折にならないまま治ります。

だから「放置すれば必ず骨折になる」は言いすぎです。しかし、こうは言えます——痛むすねをかばいながら走り続けている状態こそ、疲労骨折が起きる条件そのものだと。負荷が修復を上回っているというサインが出ているのに負荷を上げ続ければ、シンスプリントで済むか骨折に至るかは結果論でしかありません。シンスプリントの段階で負荷を調整することが、そのまま疲労骨折の予防になります。

6. サッカー選手の天敵——第5中足骨の疲労骨折(ジョーンズ骨折)

すねから足に目を移します。サッカー選手が最も警戒すべき疲労骨折は、実はすねではなく、足の小指側の付け根にある第5中足骨に起きるもの——いわゆるジョーンズ骨折です。

プロサッカー選手の疲労骨折を調べたUEFAの研究では、疲労骨折の78%が第5中足骨でした。この骨折の怖さは3つあります。

  • 治りにくい。血流の乏しい部位のため癒合が遅く、離脱は3〜5ヶ月。再発(再骨折)が29〜33%と極端に多い
  • 若い選手に多い。プロの調査でも受傷者の32%が21歳未満で、受傷した選手は有意に若かった——つまり高校年代はど真ん中
  • 前触れがある。受傷した選手の45%に、骨折の前から足の外側の痛みや違和感(前駆症状)がありました。冒頭に書いた「数週間我慢したあと、ターンの瞬間にボキッ」はこの典型です

足の外側・小指側の付け根の痛みが数週間続いているなら、それは「疲れ」ではなく骨からの警告かもしれません。完全に折れる前に見つかれば選択肢は大きく広がります。なお、人工芝が原因ではないかという議論がありますが、日本発の研究でも結論が割れており、現時点で決着はついていません。危険因子として比較的裏付けがあるのは、軸足側に多いことと、股関節の内旋(内ひねり)の硬さです。JFA登録指導者への調査では、ジョーンズ骨折という名前を知っていた指導者は多い一方、予防や治療の中身まで知っていたのは30%でした。チームでこの知識を共有すること自体に予防価値があります。

7. 見逃されやすい難敵——足の甲の奥の「舟状骨」

もうひとつ、頻度は低いものの知っておくべき骨があります。足の甲の中央よりやや内側の奥にある舟状骨(しゅうじょうこつ)です。土踏まずのアーチの要石にあたる骨で、蹴り出しのたびに強いせん断力がかかるうえ、血流が乏しく、治りにくい疲労骨折の代表格です。

問題は見つかりにくさです。症状は「運動時の、足の甲の奥の漠然とした痛み」程度で、腫れも熱感も出にくい。初期のレントゲンで写るのは3分の1程度しかなく、「症状が出てから正しい治療にたどり着くまで平均7〜10ヶ月かかった」という報告が並びます。その間、走り続けてしまうわけです。

この骨折で決定的なのは、患部に体重をかけない期間を守れるかどうかです。86例をまとめた古典的な研究では、体重をかけずにギプス固定した選手の86%が競技復帰できた一方、体重をかけたまま運動量を減らしただけの選手は26%しか復帰できませんでした。近年は手術を選ぶトップ選手の報告も増えていますが、高校生で手術が優れているといえる根拠は現時点でなく、治療方針は足の外科の専門医とよく相談すべき領域です。私たちのレベルで覚えておくべきことはシンプルで、「足の甲の奥の痛みが続くときは、早めにMRIやCTのある医療機関へ」「体重をかけない指示が出たら、絶対に守る」の2点です。

8. 復帰の考え方——日数ではなく「条件」で戻る

疲労骨折の復帰期間は部位で大きく変わります。アスリート約3,000例のメタ解析では、競技復帰までの平均はすねの後内側(最も一般的なタイプ)で44日、腓骨で56日に対し、大腿骨頸部107日、舟状骨127日。同じ「疲労骨折」でも3倍近い開きがあります。シンスプリントはこれより短く、負荷調整で数週間程度から戻れることが多い障害です。

疲労骨折の部位別の競技復帰タイムライン。低リスク部位(MTSS・腓骨など)は脛骨後内側部が平均44日(27〜61日)、腓骨が平均56日(13〜100日)で、日常生活で痛みがなければ松葉杖は不要。高リスク部位(舟状骨・大腿骨頸部など)は大腿骨頸部が平均107日(79〜135日)、足根舟状骨が平均127日(102〜151日)と復帰までの期間が大幅に長い
同じ疲労骨折でも部位で復帰まで3倍近い差。舟状骨・大腿骨頸部は「治りにくい部位」

ただし、復帰は日数で決めるものではありません。現在の考え方では、次の5つの要素を確認しながら戻します。

  1. 押しても骨の痛みがない
  2. 痛みなく歩ける
  3. 治りにくい部位(舟状骨など)では、画像で骨癒合を確認している
  4. 筋力が戻り、片脚ホップなどの機能テストを痛みなくこなせる
  5. そもそもの原因(急な負荷増・栄養・フォーム・シューズなど)が特定され、対策済みである
ランニング再開のための5つの基準。ステップ1は触診による骨の限局性圧痛の完全消失、ステップ2は歩行時にいかなる不快感や疼痛も伴わない完全無痛の歩行、ステップ3は高リスク部位の病歴がある場合のみX線またはCTでの骨癒合確認、ステップ4は片脚ホップテストなどの機能的荷重テストのクリア、ステップ5は練習量・フォーム・栄養状態など誘発要因の同定と是正
復帰は日数ではなく条件で判断。5つ目の「原因の是正」が再発予防の鍵

5つ目が最も忘れられがちです。原因をそのままにして復帰すれば、同じことが繰り返されます。ジョーンズ骨折の再発率3割という数字は、このステップの重さを物語っています。

復帰後の走行量は段階的に増やします。「週10%以内の増加」という有名な目安は、出発点としては妥当ですが、厳密に検証されたルールではないことも分かってきました。数字を機械的に守ることより、痛みの再燃がないかを見ながら、距離→スピードの順で戻すことが原則です。

9. 予防——負荷・栄養・そして女子選手は「月経」を見る

  • 負荷の急増を避ける:疲労骨折は「負荷が修復を上回った状態」なので、最大の予防は負荷の管理です。新チーム始動・合宿・選手権前など、走行量が階段状に増える時期が最も危険です。設計の考え方はオーバートレーニング症候群の記事に書きました
  • エネルギー不足を見逃さない:骨の修復には材料が要ります。練習量に対して食事量が慢性的に足りない状態(スポーツにおける相対的エネルギー不足:REDs)は、ホルモンの変化を通じて骨を直接もろくします。成人エリート長距離選手の調査では、無月経の女性・テストステロンが低い男性で骨の怪我が約4.5倍多くみられました。「たくさん走る時期ほど、たくさん食べる」が大原則です
  • 女子選手は月経が最重要のバロメーター:利用可能エネルギー不足・無月経・骨密度低下の3つは「女性アスリートの三主徴」と呼ばれ、1つあると疲労骨折リスクは2.4〜4.9倍、3つ揃うと6.8倍とされます。3ヶ月以上月経が止まっている、15歳で初経がきていない——どちらかに当てはまれば婦人科受診のサインです。「アスリートだから止まるのは普通」ではありません。10代からの無月経は、将来ではなくいまの疲労骨折リスクです。鉄不足・貧血の話は貧血対策の記事もあわせてどうぞ
  • 足まわりの柔軟性と筋力:土踏まずのアーチが着地のたびに大きく落ちる選手はシンスプリントのリスクが高いという解析があります。ふくらはぎのストレッチ、足指でタオルをたぐる運動、股関節(特に内旋)の柔軟性は、すねと足の両方の保険になります
  • 「痛い」と言える空気:シリーズ4回目、毎回同じ結論です。ジョーンズ骨折の45%には前駆症状がありました。初期の「ちょっと痛い」を言い出せるチームは、折れる前に対処できるチームです

まとめ

  • すねの痛みは範囲で見る:5cm以上の広い痛み=シンスプリント指1本の一点=疲労骨折を疑う。安静時・夜間の痛みは危険信号
  • 音叉・ジャンプ・押して確かめる方法では骨折を否定できない(音叉の感度は5.7〜16%)
  • 「レントゲンで異常なし」は「骨折なし」ではない(初期の感度12〜56%)。痛みが続くなら再受診し、MRIについて相談を
  • シンスプリントの大多数は疲労骨折にならずに治る。ただし痛いすねで走り続ける状態こそ疲労骨折の温床。早期の負荷調整が最大の予防
  • サッカー選手は第5中足骨(ジョーンズ骨折)を最警戒:プロの疲労骨折の78%、再発3割、45%に前駆症状。足の外側の痛みが続いたら骨折前に受診
  • 足の甲の奥の痛みは舟状骨かもしれない。見つかりにくく治りにくい。「体重をかけない」指示は絶対に守る
  • 復帰は日数でなく5つの条件で。原因(負荷・栄養・フォーム)の対策まで含めて復帰
  • 女子選手の3ヶ月以上の無月経は疲労骨折の重大リスク。「普通のこと」にしない

腰・太もも裏・膝・すねと足——4回を通じて伝えたいことは変わりません。成長期の骨のケガは、気合いの問題ではなく、負荷と回復と栄養の管理の問題です。「みんななるから」「レントゲンは異常なしだったから」で片づけられがちなすねの痛みの向こうに、数ヶ月の離脱につながる骨折が隠れていることがあります。この記事が、どこかのチームの「折れる前の受診」につながれば嬉しく思います。

練習量の設計はオーバートレーニング症候群の記事、腰の疲労骨折は腰椎分離症の記事、太もも裏はハムストリングの記事、膝はオスグッド病の記事、足首は捻挫の応急処置の記事でそれぞれ扱っています。

※本記事の図解3点は、当サイトが収集・整理した医学資料をもとに Google Gemini で作成したものです。

よくある質問

Q. シンスプリントと疲労骨折は自分で見分けられますか?

A. 目安はあります。シンスプリントはすねの内側の下3分の1を中心に、縦に5cm以上の広い範囲が「なんとなく全体的に」痛むのが典型です。疲労骨折は逆に、指1本で「ここ」と示せる一点(5cm未満、多くは2〜3cm)が痛み、進行するとその場所が腫れてきます。また、じっとしていても痛む・夜も痛むのは疲労骨折を疑う危険信号です。ただし、この目安で「自分は大丈夫」と決めてしまうのは危険です。押して痛いかどうかの判定は感度・特異度とも50%を下回り、単独ではほぼ当てになりません。音叉やジャンプで確かめる方法も「陰性なら骨折ではない」とは言えないことが研究で示されています。2週間以上続くすねの痛み、一点の痛み、安静時の痛みのどれかがあれば、整形外科(できればスポーツ整形)を受診してください。

Q. レントゲンで「異常なし」と言われたのに、まだ痛みます。大丈夫でしょうか?

A. 「レントゲンで異常なし」は「疲労骨折ではない」という意味にはなりません。疲労骨折の初期は骨の変化がレントゲンに写らないことが多く、初診時の感度は12〜56%にとどまるという系統的レビューがあります。つまり、疲労骨折があっても半分かそれ以上は写らないのです。骨の異変を早期から捉えられるのはMRIで、疲労骨折の診断のゴールドスタンダードとされています。痛みが続く場合は「レントゲンは異常なしだったが痛みが引かない」と伝えて再受診し、MRIなどの追加検査について相談してください。特に、足の甲の奥が痛む舟状骨の疲労骨折は初期のレントゲンで写るのが3分の1程度しかなく、正しい治療にたどり着くまで平均7〜10ヶ月かかったという報告が並ぶ、見逃されやすい骨折です。

Q. 復帰までどのくらいかかりますか?

A. シンスプリントは負荷の調整と痛みの管理で数週間程度から復帰できることが多い一方、疲労骨折は部位によって大きく変わります。アスリートを対象にしたメタ解析では、競技復帰までの平均はすねの後内側(最も一般的なタイプ)で44日、腓骨で56日に対し、大腿骨頸部で107日、足の舟状骨では127日と、部位により3倍近い差がありました。MRIの重症度グレード別では、グレード1で約6週、グレード4で約14週という報告があります。復帰の判断は日数ではなく状態で行うのが原則で、①骨の圧痛が消えている、②痛みなく歩ける、③(治りにくい部位では)画像で骨癒合が確認できている、④筋力と片脚での機能テストがこなせる、⑤そもそもの原因(急な練習量増加・栄養不足・フォームなど)が特定され対策されている——という5つの要素を確認しながら段階的に戻します。

Q. 女子選手です。練習がハードだと生理が止まるのは普通のことですか?

A. 「アスリートだから生理が止まるのは普通」ではありません。3ヶ月以上月経が止まっている状態(無月経)は、多くの場合、練習量に対して食べる量が足りていないサインで、女性ホルモンの低下を通じて骨がもろくなり、疲労骨折のリスクを直接高めます。利用可能エネルギー不足・無月経・骨密度低下は「女性アスリートの三主徴」と呼ばれ、1つあると疲労骨折のリスクは2.4〜4.9倍、3つ揃うと6.8倍になるという報告があります。10代のうちから骨粗しょう症のレベルまで骨密度が下がってしまう選手もいて、これは将来の話ではなく「いまの怪我のリスク」です。これまで規則的にあった月経が3ヶ月以上止まっている、または15歳になっても初経がきていない場合は、婦人科(スポーツ婦人科外来があれば理想的)の受診と、食事量・練習量の見直しをおすすめします。

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