スポーツ医学の提言では、公式戦の間隔は組織が完全に修復するために最低96時間が必要とされています。中2日(72時間)はそれを下回る条件です。筋肉が壊れた指標(CK)と筋肉痛は試合の48時間後にピークを迎え、72時間後もまだ高い——つまり「2日後が一番危ない日」です。アイスバスも測定機器もない高校の部活で、水・糖質・睡眠・翌日の過ごし方だけで何ができるかを、救急科専門医が解説します。
サッカーの連戦の疲労回復|中2日で戻すために高校生ができることを救急医が解説
【この記事の要約】 スポーツ医学の提言では、公式戦の間隔は組織が完全に修復するために最低96時間が必要とされています。中2日は72時間。最初から足りていません。しかも、筋肉が壊れた指標(CK)と筋肉痛のピークは試合当日でも翌日でもなく、48時間後。つまり「2日後が一番危ない日」です。この記事では、アイスバスも測定機器も専属スタッフもいない高校の部活で、水・糖質・睡眠・翌日の過ごし方だけで回復をどこまで上げられるかを整理します。あわせて、サプリメントを高校生に勧めない理由と、朝の3つのチェックで「戻っていない」を見抜く方法もお伝えします。
選手権予選が始まりました。トーナメントは中2日、中3日で回ります。インターハイ予選も、リーグ戦の過密な時期も同じです。
「試合が終わったら、次の試合まで休む」——多くのチームで、回復はこの一言で終わっています。しかし中2日というのは、放っておいて戻る時間ではありません。 何をするかで、2試合目に出せる力がはっきり変わります。
一方で、この分野の情報はほとんどがプロ向けです。アイスバス、心拍変動の毎朝測定、専属の栄養士と理学療法士、移動と時差の管理。高校の部活には、そのどれもありません。
なので今回は、お金も機材もかけずに、今日からできることに絞ります。前回の足がつる話の続きとして、連戦を戦い抜く体の作り方です。
1. まず知っておくこと——中2日は、そもそも足りていない
最初に、身も蓋もない事実からお伝えします。
スポーツ医学の領域では、公式戦の間隔は、組織が完全に修復されるために少なくとも96時間(4日)を確保すべきだと提言されています。ところが現実のトーナメントやリーグ戦の終盤では、72時間(中2日)、ときに48時間での連戦が当たり前になっています。
つまり、中2日の2試合目は、どれだけ正しく回復させても「完全には戻っていない体」で戦うことになります。
これは選手や指導者の努力不足ではありません。日程の構造上そうなっている、という話です。だからこの記事の目的は2つあります。
- 戻る割合を1%でも上げること
- 戻っていない前提で、戦い方と練習量を決めること
後者を飛ばして前者だけをやると、「回復させたから大丈夫だろう」と負荷をかけすぎて、3試合目に壊れます。
2. 試合の後、体の中で何が起きているか——72時間の時間割
試合の疲労は「乳酸が溜まった」という単純な話ではありません。複数の別々の現象が、別々のスピードで回復していきます。 ここを分けて考えられると、何をいつやるべきかが見えます。
主な指標の回復スピードは、おおよそこうです。
| 試合直後 | 24時間後 | 48時間後 | 72時間後 | |
|---|---|---|---|---|
| 筋グリコーゲン(燃料) | 約50%減、速筋線維は枯渇 | 回復途上 | 適切に食べれば回復 | ほぼ戻る |
| CK(筋肉が壊れた指標) | 上昇し始める | 急上昇 | ピーク | まだ高い |
| 筋肉痛(DOMS) | 軽い | はっきり出る | ピーク(最悪) | 軽くなるが残る |
| 筋力・ジャンプ力 | 大幅低下(最大−36%) | まだ低い | 不完全な回復 | 戻りつつあるが脆い |
| ホルモンバランス | 低下 | 回復途上 | ほぼ戻る | 個人差あり |
注目してほしいのは、CKと筋肉痛のピークが「48時間後」だという点です。
試合の翌日ではなく、翌々日。土曜に試合をしたら、月曜が最悪の日です。そして中2日なら、その月曜の翌日が2試合目です。
さらに、試合間隔が48時間(中1日)になると、1試合目と2試合目のあいだで修復が追いつかず、2試合目の後にCKとCRP(炎症の指標)が累積的に急上昇することが確認されています。連戦の3試合目、4試合目で怪我が増えるのは、この積み上がりのためです。
そしてもう一つ、実務上きわめて重要な事実があります。ハムストリング(太もも裏)の筋力は、試合の48時間後でもまだ完全には戻っていません。 疲れたハムストリングは肉離れの直接の引き金です。連戦の終盤に太もも裏をやる選手が多いのは、偶然ではありません(ハムストリング肉離れの記事で詳しく扱っています)。
3.「半分残っているのに走れない」——グリコーゲンの落とし穴
燃料の話をします。ここは、知っているかどうかで行動が変わる部分です。
プロの試合で選手は10〜13kmを走り、そのうち約8%が時速19.8km以上の高速度ランニングです。この負荷で、筋肉に蓄えられた糖(筋グリコーゲン)は、試合前の449 mmol/kg dwから直後には225 mmol/kg dwへと、およそ半分に減ります。
ここで「半分は残っているじゃないか」と思ってしまうのが罠です。
筋肉には性質の違う線維が混ざっています。ゆっくり長く働く遅筋線維(タイプI)と、速く強く働く速筋線維(タイプIIa・IIx)です。スプリント、ジャンプ、切り返し——サッカーで勝負を決める動きは、すべて速筋線維が担当します。
線維を1本ずつ分けて調べた研究では、全線維の約半分が、完全に枯渇またはそれに近い状態まで落ちていました。平均すれば半分残っていても、肝心の速筋線維は空っぽなのです。
これが、試合終盤に「走れているのにスプリントだけが出ない」現象の正体です。そして連戦では、この空っぽの状態を抱えたまま次の試合に入ることになります。
枯渇した筋グリコーゲンを完全に再合成するには、通常48〜72時間かかります。 中2日でこれを間に合わせるには、試合が終わった直後から意識的に糖質を入れるしかありません。放っておいて戻る量ではないのです。
4. 最初の60分にやること——水・糖質・たんぱく質
ここからが実践です。優先順位ははっきりしています。
① 水分と塩分(最優先)
試合で減った体重は、そのまま失われた水分です。目安は、減った体重の1.5倍の水分を数時間かけて摂ること。1kg減っていたら約1.5リットルです。
「1.5倍」なのは、飲んだ水がすべて体に残るわけではないからです。そして重要なのが、水だけを飲まないこと。 塩分を含まない水を大量に入れると、血液中のナトリウムが薄まり、体はそれを戻そうとして尿を作ります。飲んだそばから出ていくのです。
スポーツドリンク、経口補水液、あるいは牛乳が適しています。とくに牛乳は、水分・電解質・たんぱく質を同時に摂れるので、試合後の飲み物として理にかなっています。
水分補給の詳しい考え方は真夏の水分補給戦略に、水だけを飲みすぎる危険は足がつる記事にも書いています。
② 糖質(30分以内に始める)
試合直後から数時間は、筋肉が糖を取り込む力が一時的に高まっている時間帯です。この窓を使わない手はありません。
プロの基準は体重1kgあたり毎時1.0〜1.5g。体重60kgの選手なら1時間に60〜90gです。これはおにぎり2〜3個分にあたります。
コンビニ・購買で揃える現実的な組み合わせを挙げておきます。
- おにぎり2個 + 牛乳(またはヨーグルトドリンク)
- あんぱん + スポーツドリンク
- バナナ2本 + 牛乳
- カステラ + 経口補水液
食欲がないときは、固形物より飲み物のほうが入ります。 「食べられないから何もなし」が最悪の選択です。
③ たんぱく質(糖質と一緒に)
壊れた筋肉を直す材料です。3〜4時間おきに20〜25g(体重1kgあたり0.25〜0.4g)を分けて摂るのが効率的とされています。一度にまとめて摂るより、こまめに入れるほうが合成が続きます。
20gの目安は、牛乳500ml、卵3個、鶏むね肉100g、ヨーグルト2〜3個といったところです。
④ 連戦の期間中は、普段より多く食べる
ここが高校年代で最も落ちやすい部分です。
欧州サッカー連盟(UEFA)の栄養に関する専門家声明では、糖質の摂取量を状況に応じて体重1kgあたり3〜8gの範囲で調整するとされ、中3〜4日で試合が続く連戦期には、1日あたり体重1kgあたり6〜8gという高めの設定が推奨されています。体重60kgなら1日360〜480gの糖質です。
そして、これを裏づける不都合な研究があります。シニアのプロ選手は試合日やトレーニング日に合わせて食べる量を意識的に増やせるのに対し、ユース年代の選手はそれができていないことが示されているのです。試合で消費が跳ね上がった日でも、摂取量が普段と変わらない。
つまり高校年代では、「回復のために何か特別なものを足す」より前に、「連戦中はいつもより多く食べる」を実行できているかどうかが先です。
試合前日・当日の食べ方は勝負メシの記事で詳しく扱っています。
5. 眠れないのが一番こわい——試合の夜の作り方
睡眠は、最もエビデンスの強いリカバリー手段です。 成長ホルモンの分泌、炎症の収束、認知機能のリセット、免疫の回復——どれも寝ている間に進みます。サプリを10種類そろえるより、1時間長く寝るほうが確実に効きます。
エリートアスリートには、一般成人の7〜9時間を超える8〜10時間が必要とされています。
ところが、試合の夜ほど眠れません。 理由は生理学的にはっきりしています。
- 激しい運動で交感神経が興奮したままになっている
- アドレナリンなどのカテコールアミンが上がっている
- 深部体温が高いまま下がりきっていない
- 夜の試合なら、帰宅が遅い
人が眠りに落ちるには、深部体温が下がる必要があります。試合直後の体は、その逆の状態です。
試合の夜にやること
- 帰ったらぬるめのシャワーか入浴。上がったあとに体温が下がっていく過程で眠気が来ます。熱すぎる湯は逆効果です
- 寝室を涼しく(18〜20℃が目安)
- スマホを見ない。 試合の振り返りをSNSでするのは、翌日にしてください。光と情報の両方が覚醒を引き延ばします
- 寝る前に糖質とたんぱく質を少し。空腹で寝ると夜間に筋肉が分解されます。牛乳1杯でも違います
- カフェインを摂らない。試合前にエナジードリンクを飲んでいると、その夜まで残ります
昼寝は、はっきり有効です
夜に足りなかったぶんは、昼寝で補えます。午後(14時ごろ)に30〜60分の仮眠をとることで、認知機能、スプリントやジャンプの成績、主観的な疲労感が改善することが示されています。
土日の連戦で、試合と試合のあいだの日。この日の昼寝は、練習より価値があるかもしれません。
眠れないこと自体への対処は試合前日の睡眠の記事に詳しく書いています。
6. 翌日は動く、翌々日は休む——48時間後が最も危ない
ここは指導者・保護者に読んでいただきたい節です。
トップクラブが中2日の日程で実践している組み立ては、驚くほどシンプルです。
| 日 | やること |
|---|---|
| 試合当日 | 直後の補水・補食、入浴、睡眠環境を整える |
| 翌日(1日後) | 軽く動く。 低強度の有酸素運動(自転車、軽いジョグ)とストレッチ。下半身に強い負荷はかけない |
| 翌々日(2日後) | 完全休養。 グラウンドでの練習を入れない |
| 次戦前日 | 45〜60分に短縮。数本の短いスプリントと戦術確認だけ |
多くのチームが逆をやっています。 「翌日は疲れているから休み、翌々日から普通に練習」。これが、生理学的にはちょうど裏返しなのです。
理由は第2節の表のとおりです。CKと筋肉痛のピークは48時間後。最も筋肉が壊れている日に、グラウンドで走らせることになります。逆に翌日は、まだ損傷が進行しきっておらず、軽く動いて血流を促したほうが回復が早い時間帯です。
「完全休養は無理だ」という現場が多いことは承知しています。その場合でも、この日をミーティング、映像確認、上半身のトレーニング、ストレッチに充てるだけで意味があります。 グラウンドで走らせないこと自体が介入です。
そして、この2日目の休養は練習量の設計の問題であって、選手の意識の問題ではありません。休ませる判断を選手にさせないでください。この年代の選手は、まず「休みたい」と言えません。練習量と休養の設計についてはオーバートレーニング症候群の記事もあわせてお読みください。
7. 頭の疲れは、足より先にパスの精度を落とす
見落とされがちですが、連戦で溜まるのは筋肉の疲労だけではありません。
サッカーは、常に変化する状況を読み、判断し、実行し続けるスポーツです。この認知的な負荷が積み重なると、精神的疲労(Mental Fatigue)という状態になります。
これは「気が滅入る」という話ではなく、測定できる現象です。長時間の認知的な作業のあと、脳の一部の働きが落ち、同じ運動でも「きつい」と感じる度合いが不釣り合いに上がります。 その結果、心拍数や乳酸値といった客観的な限界に達する前に「もう無理だ」と感じ、高強度で走る距離とスプリント回数が減ります。
そして、より深刻なのはこちらです。精神的疲労の状態にある選手は、
- パスの正確性が落ちる
- シュートの精度が落ちる
- タックルの成功率が落ちる
- 状況判断が遅れる
技術が落ちるのではなく、技術を出す前段階が落ちるのです。連戦の後半で「なんでもないパスミスが増える」のは、集中力の問題として片づけられがちですが、生理学的な背景があります。
高校年代では、ここに授業・課題・受験・移動が乗ります。 プロより条件が悪い場合すらあります。
対策は、拍子抜けするほど地味です。
- 試合と試合のあいだに、頭を使わない時間を作る(外を歩く、自然のある場所に行く、音楽を聴く)
- 戦術ミーティングを詰め込みすぎない。次戦前日に複雑なタスクを増やさない
- SNSと動画を見続けない。休んでいるつもりで脳は働き続けます
- 眠る。これが最も効きます
8. アイシング・アイスバス・ストレッチ——効くもの、効かないもの、損をするもの
回復の手段は多く語られますが、エビデンスの強さには差があります。 高校の現場で使える形に整理します。
冷水浴(アイスバス)——連戦では有効。ただし「損」もある
プロが試合直後に行う冷水浴(10〜15℃で10分程度)には、炎症を抑え、深部体温を下げて入眠を助けるという利点があります。中2日の連戦においては、合理的な選択です。
ただし、無条件に良いものではありません。
筋力トレーニング後に毎回冷水浴を行った群と、軽い運動で回復した群を12週間比べた研究では、軽い運動の群では速筋線維の断面積が17%増えたのに対し、冷水浴の群では増えませんでした。 冷やすことで、筋肉が太くなるためのシグナルまで消してしまうのです(なお、最大筋力の向上そのものは損なわれませんでした)。
つまり、こういう使い分けになります。
- 連戦の最中:次の試合までに戻すことが最優先 → 使ってよい
- 体づくりの時期(オフ、リーグ戦の合間、冬):トレーニングの効果を消してしまう → 毎回やるのは損
高校の部活にアイスバスはありませんが、シャワーや水道水で下半身を冷やす程度でも入眠には役立ちます。ただし、長時間の冷却は低体温につながります。 気温の低い日に長く水に浸かるのは避けてください。
ストレッチ——やる価値はある。ただし筋肉痛は防げない
正直に書きます。ストレッチで遅発性筋肉痛(DOMS)を予防できるという結果は、研究では示されていません。
柔軟性の維持や、動きの質という別の価値はあります。習慣としてやめる必要はありません。ただ、「ストレッチをしたから明日は筋肉痛にならない」という期待は持たないでください。
軽い運動(アクティブリカバリー)——翌日の主役
試合の翌日に、軽いジョグ、自転車、水中歩行などで血流を促すことは、回復の基本です。じっとしているより抜けます。強度は「会話ができる程度」まで。ここで追い込むと逆効果です。
着圧ウェア——移動が長いときに
長距離のバス移動などで下肢の血流が滞る場面では、意味があります。日常的に必須というほどではありません。
高用量のビタミンC・Eサプリ——おすすめしません
「炎症を抑えれば回復が早まる」と考えて高用量の抗酸化サプリを飲むのは、逆効果になりえます。運動によって生じる酸化ストレスは、体が強くなるためのシグナルでもあるためです。これを完全に消してしまうと、トレーニングの適応そのものが鈍る可能性が指摘されています。
9. サプリメントを、高校生に勧めない理由
前節の最後にも関わりますが、ここは項を分けて書きます。連戦のリカバリーを調べると、必ずサプリメントの話が出てくるからです。
国際オリンピック委員会(IOC)の合意声明では、効果の根拠が比較的しっかりしている成分としてカフェイン、クレアチン、硝酸塩、重炭酸、β-アラニンなどが挙げられています。これは事実です。
しかし、これらの研究対象は、そのほとんどが成人のトップアスリートです。
高校年代に勧めない理由を3つ挙げます。
① 成長期のデータが足りない
若年アスリートは、成長と発達が同時に進行しているという点で成人と根本的に違い、成人向けの推奨がそのまま適合しないことが国際的な合意声明でも指摘されています。 クレアチンについても、専門家の監督下では安全で有益な可能性があるとしつつ、この年代における長期的な安全性と有効性は今後の研究が必要というのが現在の到達点です。「まだ分かっていない」ものを、成長途中の体に日常的に入れる理由はありません。
② 意図しないドーピング違反のリスク
表示されていない成分が混入していた事例は実際にあります。将来、上のカテゴリーでプレーする可能性がある選手ほど、慎重であるべきです。
③ カフェインは「疲労を隠す」——高校年代では危険
プロ向けの資料では、カフェインは精神的疲労をマスキングする有力な手段として推奨されます。しかし疲労を隠すということは、体からの警告を消すということです。疲れているのに疲れを感じない状態で全力を出せば、そのぶん壊れます。加えて、試合前に摂ったカフェインはその夜まで残り、最も効くリカバリー手段である睡眠を壊します。 中2日で最悪の選択です。
そして、最大の理由は別のところにあります。
高校生の回復不足の原因は、サプリの不足ではありません。食べる量と寝る時間が足りていないことが、ほとんどです。
第4節で触れたとおり、ユース年代の選手は、運動量が増えた日にエネルギー摂取量を増やせない傾向が研究で示されています。サプリを買うお金と手間を、試合後30分の補食と、1時間長い睡眠に回すほうが、確実に効きます。
そのうえで使う場合は、必ず医師・薬剤師・公認スポーツ栄養士に相談してください。
10. 回復できていないサイン——朝の3つのチェック
プロは毎朝、心拍変動(HRV)という指標を測定して回復状態を評価します。これは有用ですが、高校の部活には必要ありません。同じことは、機材なしで、朝の3分でできます。
① 起床時の脈拍
目が覚めて、起き上がる前に、手首か首で15秒間脈を数えて4倍します。まず自分の平常値を1週間ほど記録して知っておくのが前提です。
普段より1分あたり5〜10回多い日が続くなら、体はまだ戦闘状態から戻っていません。
② 朝の体重
起床後、トイレを済ませてから測ります。試合の翌朝、前日の朝より1kg以上減ったままなら、水分が戻っていません。飲み方が足りていないサインです。
③ 気分・意欲
これがいちばん早く出ます。「今日は練習に行きたくない」が続く、いつもなら笑える冗談が面白くない、朝起きるのがつらい。主観は、数字より早く異常を教えてくれます。
そして、この3つとは別の話
筋肉痛だと思っていたものが、筋肉痛ではないことがあります。
- 一点を指で押すと強く痛む → 肉離れや疲労骨折を疑います
- 3日たっても痛みが引かない、むしろ強くなる → 疲労ではありません
- すねの内側、足の甲、腰、膝のお皿の下の痛みが続く → 成長期に多い部位です
成長期は骨と腱のつなぎ目が弱い時期です。連戦は、腰椎分離症、オスグッド病、シンスプリントや疲労骨折が動き出すきっかけになります。「連戦だから筋肉痛だろう」で全部片づけないでください。
そして、尿が濃い茶色やコーラ色になったときは、横紋筋融解症のサインです。運動の1〜3日後に出てくることもあります。この場合は受診してください(足がつる記事の最終節で詳しく扱っています)。
まとめ
- 中2日は、そもそも足りていない。 スポーツ医学の提言は最低96時間、中2日は72時間。「完全には戻っていない体で戦う」前提で組み立てる
- 一番危ないのは翌々日。 CKと筋肉痛のピークは48時間後。翌日は軽く動き、翌々日は休む——多くのチームがこれを逆にやっている
- 平均で半分残っていても、速筋線維は空。 だからスプリントだけが出ない。試合直後からの糖質補給でしか埋まらない
- 試合後30分の優先順位は「水分と塩分 → 糖質 → たんぱく質」。 減った体重の1.5倍の水分を、水だけでなく塩分と一緒に
- 連戦中はいつもより多く食べる。 UEFAの目安は1日あたり体重1kgあたり6〜8gの糖質。ユース年代は、ここができていないことが研究で示されている
- 睡眠が最強。 8〜10時間、そして14時ごろの30〜60分の昼寝は練習より価値があることがある
- 冷水浴は連戦では有効、体づくりの時期は損。 ストレッチで筋肉痛は防げない
- サプリより、食事と睡眠。 成長期のデータは不足しており、カフェインは疲労を隠して怪我を招く
- 朝の3つのチェック——起床時の脈拍・体重・気分。3日たっても引かない痛みは、疲労ではない
連戦は、うまい選手が勝つとは限りません。戻せた選手が勝ちます。
そして、この記事に書いたことのほとんどは、お金がかかりません。試合が終わっておにぎりを食べること、水に塩分を足すこと、スマホを置いて早く寝ること、翌々日に走らないこと。地味ですが、これが2試合目の20分を変えます。
予選を戦うすべてのチームが、最後の試合まで全員そろって戦えることを願っています。
※本記事の図解6点は、当サイトが収集・整理した医学資料をもとに Google Gemini で作成したものです。
前後の記事もあわせてどうぞ。試合前日の食事は勝負メシ、眠れない夜は睡眠戦略、足がつるならこむら返りの記事、練習量の設計はオーバートレーニング症候群、太もも裏の肉離れはこちらで扱っています。
※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。痛みが続く場合や本文中の危険なサインがある場合は必ず医療機関を受診し、緊急時は119番を要請してください。サプリメントの使用は、必ず医師・薬剤師・公認スポーツ栄養士にご相談ください。内容は執筆時点で参照可能な原著論文・専門家合意声明・公的機関の情報に基づいています。
よくある質問
Q. 中2日で、体は完全に回復できますか?
A. できません。それを前提に組み立てるのが正解です。スポーツ医学の提言では、公式戦の間隔は組織が完全に修復されるために少なくとも96時間(4日)を確保すべきとされていますが、中2日は72時間しかありません。実際、筋肉が壊れたときに血液中へ出てくるCK(クレアチンキナーゼ)という酵素と、遅れて出る筋肉痛は、試合の48時間後にピークを迎え、72時間後もまだ高い値のままであることが多いと報告されています。試合直後には最大で36%も落ちる筋力も、戻るのに48〜72時間以上かかります。つまり中2日の2試合目は、どんなに正しく回復させても「完全には戻っていない体」で戦うことになります。だからこそ、戻る割合を1%でも上げることと、戻っていない前提で戦い方と練習量を決めることの両方が要ります。「気合いで戻る」という話ではなく、生理学的に戻りきらない時間だ、と知っておいてください。
Q. 試合が終わってすぐ、何を食べればいいですか。コンビニで買えるもので教えてください。
A. 優先順位は「水分と塩分 → 糖質 → たんぱく質」で、試合終了から30分以内に始めるのが理想です。理由は、試合直後の数時間は筋肉が糖を取り込む力が一時的に高まっていて、この時間帯を逃すと回復が遅れるからです。コンビニで揃えるなら、おにぎり2個(糖質)+牛乳またはヨーグルトドリンク(たんぱく質と塩分と水分)+スポーツドリンク、という組み合わせが現実的です。牛乳は水分・電解質・たんぱく質を同時に摂れるので、試合後の飲み物として理にかなっています。水だけを大量に飲むのは避けてください。血液中のナトリウムが薄まって尿として出ていってしまい、体に水が残りません。量の目安は、試合で減った体重の1.5倍の水分です(1kg減っていたら約1.5リットルを数時間かけて)。バナナ、あんぱん、カステラのような糖質の多いものも有効です。食欲がないときは、固形物より飲み物のほうが入ります。
Q. 試合の翌日は、休んだほうがいいですか。それとも動いたほうがいいですか。
A. 翌日は軽く動く、翌々日こそ休む、が現在の考え方です。トップクラブが実践している中2日の組み立ては、試合翌日に低強度の有酸素運動やストレッチで血流を促し(下半身に強い負荷はかけない)、試合の2日後を完全休養にする、という形です。意外に思われるかもしれませんが、筋肉の損傷を示すCKと筋肉痛がピークに達するのは試合当日でも翌日でもなく、48時間後だからです。ここでグラウンドでの練習を入れると、最も壊れている筋肉にさらに負荷をかけることになります。高校の部活で完全休養が難しい場合でも、この日をミーティング、映像確認、上半身のトレーニング、ストレッチなどに充てるだけで意味があります。逆に翌日にじっと座って過ごすと血流が滞り、かえって抜けにくくなります。
Q. プロテインやサプリメントは飲んだほうがいいですか?
A. 高校年代では、まず食事で埋めることをおすすめします。サプリメントを頭から否定するものではありませんが、理由が3つあります。第一に、効果の根拠がある成分(カフェイン、クレアチンなど)の研究は、そのほとんどが成人のトップアスリートを対象にしたもので、成長期の選手にそのまま当てはめられません。国際的な合意声明でも、若年アスリートには成人向けの推奨がしばしば適合しないと指摘されています。第二に、意図しないドーピング違反のリスクがあります。表示されていない成分が混入していた事例は実際にあり、将来上のカテゴリーでプレーする可能性がある選手ほど慎重であるべきです。第三に、そしてこれが最も大きい理由ですが、高校生の回復不足の原因はサプリの不足ではなく、単純に食べる量と寝る時間が足りていないことがほとんどだからです。研究でも、ユース年代の選手はシニアと違って運動量が増えた日にエネルギー摂取量を増やせない傾向が示されています。サプリを買う前に、試合後30分の補食と、1時間長い睡眠を確保するほうが確実に効きます。使う場合は、必ず医師・薬剤師・公認スポーツ栄養士に相談してください。