チームの特徴
近江高校サッカー部は、プリンスリーグ関西1部所属(2026年現在)、滋賀県彦根市を本拠地とする新興の強豪。野洲・草津東という県内の絶対王者が君臨してきた滋賀で、2015年に部員わずか4名から再建が始まり、約10年で全国の頂点を争うチームへと駆け上がった。「魅せて勝つ」スタイルと選手の主体性を極限まで引き出す組織づくりで異彩を放ち、2023年度の第102回選手権準優勝で全国にその名を轟かせた。
スタイル: 元Jリーガーの前田高孝監督が掲げるスローガンは「Be Pirates(海賊になれ)」。エリートに甘んじず挑戦者として泥臭く戦い、仲間との絆でジャイアントキリングを起こす哲学だ。足元の技術と流動的なパスワークを土台にしつつ、2026年は攻撃的な3バックをベースに、より強固な守備意識とトランジションの速さを融合。「全員が前向きに局面へ飛び込む守備」を徹底し、無失点勝利が急増している。戦術的ミスを「しゃあない」と許容する心理的安全性の文化が、大舞台での創造的なプレーを支えている。
主な実績
| 大会 | 実績 | 備考 |
|---|---|---|
| 全国高校サッカー選手権 | 準優勝(2023年度) | 決勝で青森山田に敗れるも「魅せて勝つ」が全国の頂点に通用 |
| 全国高校総体(インターハイ) | 出場5回 | 2017年初出場(強化2年目)。2026年は2大会ぶり5回目 |
| 高円宮杯 プリンスリーグ関西1部 | 所属(2021年昇格) | Jユース勢と関西最高峰で戦う |
| 県高校総体(インターハイ予選) | 優勝(2026年) | 準決勝・決勝とも3-0完封で全国へ |
→ 2015年の本格強化開始からわずか8年で2023年度選手権準優勝という、日本の高校サッカー史でも稀有な急成長を遂げた。2026年も県総体を準決勝・決勝とも3-0で制し、全国の常連としての地位を固めている。
チームの歩み
再創生:部員4名からの出発(2015年〜)
- 2015年:部員わずか4名の存続危機の中、元Jリーガー(清水・新潟S・独FSVデルンベルク)の前田高孝が監督に就任。自ら車で関西中を回り「一つでも武器のある選手」を集めるスカウトに奔走
- 2016年:学校から「強化クラブ」指定を受け、第2グラウンドを県北部初の本格人工芝に整備。強化1期生(67名)が入学し実質的な創生期が始動
飛躍:県制覇からリーグ昇格へ
- 2017年:強化2年目、1・2年生のみで野洲・草津東を破りインターハイ初出場
- 2018年:プリンスリーグ関西へ初昇格。2021年にトップカテゴリーへの登竜門・プリンス関西1部へ昇格
黄金期:全国準優勝(2020年〜2023年)
- 2020年度:選手権に初出場。2022年度は2回戦進出
- 2023年度:第102回選手権で強豪を次々撃破し、決勝で青森山田に敗れるも全国準優勝。卓越した技術と攻撃的姿勢が全国のファンを魅了
現在(2026年)
- 県高校総体(インターハイ予選)を準決勝・水口に3-0、決勝・前回王者の立命館守山に3-0と完封で制し、2大会ぶり5回目の全国インターハイへ
強さの3本柱:「海賊たち」の流儀
① デザイン思考とブランディング
前田監督の「エリートの栄光・致命的挫折・世界放浪・学問探求」という多面的キャリアから生まれた「Be Pirates」のブランディング。リベラルアーツやデザイン思考をピッチに落とし込む手法は、精神論先行になりがちな高校スポーツ界で極めて先駆的だ(2024年に著書『Boys Be Pirates!』も出版)。
② 圧倒的な主体性と心理的安全性
選手に「分析」「メディカル」「広報」「サッカースクール運営」などの役職を割り当て、夏以降は対戦相手の分析・戦術立案まで選手主体で行う。ミスを「しゃあない」と許容する文化が、指示待ちではなく自ら課題を解決できる「逞しい人間」を育てる。
③ ローカルとグローバルの接続
雪国・滋賀県北部のハンデを人工芝整備で克服する一方、オーストラリアのCaboolture SFC、2026年からはフィンランドのSalPaと提携。内部進学に頼らず、シーガル広島・京都サンガU-15・FC湖東など西日本全域から「一つの武器を持つ個性」を集めるオープンな育成エコシステムを築いている。
輩出した主なプロ選手
強化開始から約10年で、複数のプロを輩出する育成サイクルが確立されつつある。
- 山内 舟征(DF、SHIBUYA CITY FC):強化1期生。高校でFW→CBへ転向し開花。関西学院大→FC琉球→いわてグルージャ盛岡を経て、2026年からJリーグ参入を目指すSHIBUYA CITY FCへ加入
- 竹村 俊二(MF、FC延岡AGATA):強化1期生。立正大→カマタマーレ讃岐で同校出身者初のJリーガーに。2026年1月よりFC延岡AGATA(九州リーグ)へ
- 藤田 准也(DF、FC岐阜):強化8期生。184cmと対人守備の強さを武器に、同校初の「高卒での直接Jリーグ加入」を実現(2026年新加入)
※2026 W杯日本代表26人に同校OBの選出はなし(W杯代表26人の出身校特集)。歴史が浅くA代表定着者はまだいないが、高卒プロの恒常的輩出フェーズへ移行しつつある。
補足:プロ選手の所属クラブは移籍により頻繁に変動します。最新の所属情報はJリーグ公式などでご確認ください。
2026年の注目選手
いずれも2026年度に在学中の高校生(2008年4月2日以降生まれ)。学年は近江高校サッカー部公式サイトの選手一覧で全員3年生と確認。主将・川上=DF、山岡=FW、古荘=MFのポジションは公式戦報道で確認済み。
攻撃の主力(3年生)
| 選手 | 学年 | ポジション・備考 |
|---|---|---|
| 山岡 凌陽(FW) | 3年 | 京都サンガU-15/181cmの大型アタッカー。ドリブルとコンビネーションに長け、県予選準決勝では頭部出血をおして2得点した決定力の象徴 |
| 松元 翔真(FW/MF) | 3年 | 西宮タイガース/プリンスでも得点を量産するスコアラー。前線の決定的な仕事に優れる |
| 今井 龍成(FW/MF) | 3年 | Vervent京都/圧倒的なスピードと裏への抜け出し。プリンス三田学園戦などで得点 |
| 古荘 隆太(MF) | 3年 | 京都サンガU-15/チーム随一の技巧派。パスワークと崩しの中心を担う |
| 安田 宙央(MF) | 3年 | 西宮タイガース/攻守をつなぐリンクマン。運動量と戦術眼に加え得点力も光る |
守備・GKの軸(3年生)
| 選手 | 学年 | ポジション・備考 |
|---|---|---|
| 川上 尚馬(MF) | 3年 | 翼SCレインボー垂井/2026年シーズン主将。絶え間ないコーチングと統率力で最終ラインを束ねる(兄は選手権準V経験者) |
| 宮川 湧(MF) | 3年 | FC湖東/中盤から攻め上がり、正確な折り返しでアシストも記録する超攻撃的なプレーヤー |
| 鈴木 優友(GK) | 3年 | JSC千葉/守護神。ビルドアップの起点としても機能する |
| 帽子 魁(MF/DF) | 3年 | 京都FC長岡京/戦術理解度が高く、ピッチ内外でリーダーシップを発揮 |
| 細崎 喬士郎(MF/DF) | 3年 | シーガル広島/広島の強豪から越境入学。守備のマルチロールとして重宝される |
→ 主力は2023年度の選手権準優勝を間近で見て育った世代。多様な出身クラブの個が「近江のスタイル」で化学反応を起こし、全員が主体的に判断する総合力が武器だ。
2026年インターハイ滋賀県予選(準決勝・決勝とも3-0完封で全国へ)
| ラウンド | 日付 | 対戦相手 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 準々決勝 | 5/30 | 八幡 | ○ 5-0 |
| 準決勝 | 6/4 | 水口 | ○ 3-0 |
| 決勝 | 6/7 | 立命館守山 | ○ 3-0 |
→ 守備意識の向上が顕著で、準決勝・決勝をいずれも3-0と完封し、前回王者の立命館守山を退けて2大会ぶり5回目の全国インターハイ出場を決めた。7月末のインターハイ全国大会に滋賀代表として臨む。
2026年プリンスリーグ関西1部 序盤戦(攻撃力に火がつき上昇中)
| 節 | 日付 | 対戦相手 | 結果 | 近江の得点者 |
|---|---|---|---|---|
| 第1節 | 4/5 | 履正社(A) | ● 1-3 | 安田 |
| 第2節 | 4/11 | 神戸弘陵(H) | △ 2-2 | 松元・古荘 |
| 第3節 | 4/19 | 大阪産大附(A) | △ 1-1 | 宮川 |
| 第4節 | 4/25 | 阪南大高(H) | ○ 6-0 | 山岡・松元・安田・今井・東野・山本(6選手) |
| 第5節 | 4/29 | 京都サンガU-18(H) | ● 1-3 | 今井 |
| 第6節 | 5/4 | 京都橘(A) | ● 0-2 | — |
| 第7節 | 5/10 | 三田学園(A) | ○ 3-0 | 古荘・今井・山岡 |
→ 開幕は引き分けと惜敗が続いたが、第4節の阪南大高戦で6選手が得点する6-0の大勝を機に攻撃が機能。首位を争う京都サンガ・京都橘には敗れたものの、第7節は敵地で三田学園を3-0と退けるなど確かな上昇曲線を描く。最新の順位はプリンスリーグ関西1部 順位表で確認できる。