チームの特徴
V・ファーレン長崎U-18は、2012年に活動を開始した長崎県初のプロクラブの最上位育成組織。小嶺忠敏監督の国見高校に象徴される強烈な高校サッカーの土壌がある長崎で、Jクラブユースとしての立ち位置を一から築いてきた。2021年にはプリンスリーグ九州を制してプレミアリーグ参入戦に進出し、2026年のJユースカップではベスト8まで勝ち上がっている。
スタイル: クラブのクレド(信条)は「サッカーを通して、長崎そして世界に『今を生きる楽しさを』を広げていく」。育成年代で陥りがちな結果至上主義を排し、選手自身が状況を俯瞰して主体的にプレーを選択できるインテリジェンスの育成に重きを置く。原田武男監督(V・ファーレン長崎トップチームのコーチやギラヴァンツ北九州の監督を歴任)のもとでは、伝統のポゼッションを土台にしながら、前線からの強度の高いプレッシングと奪ってからの速いショートカウンターを組み合わせたハイブリッドなスタイルへ進化。長身選手を狙う精度の高いセットプレーも武器にしている。
主な実績
| 大会 | 実績 | 備考 |
|---|---|---|
| 高円宮杯 JFA U-18プリンスリーグ九州 | 優勝(2021年) | U-18創設から10年目での快挙。プレミアリーグ参入戦へ進出 |
| 高円宮杯 プレミアリーグ参入戦(2021年) | 決定戦進出 | 決定戦で前橋育英に0-2。プレミア昇格まであと一歩 |
| Jユースカップ(Jリーグユース選手権) | ベスト8(2026年) | 準々決勝でヴィッセル神戸U-18に0-1 |
| 高円宮杯 JFA U-18プリンスリーグ九州1部(2026) | 第9節終了時点 首位 | 8勝0分1敗・勝点24・25得点11失点(得失点差+14) |
→ 2021年のプリンスリーグ九州制覇が黄金期の号砲。参入戦のブロック決勝で前橋育英に0-2と敗れて昇格は逃したが、全国の強豪と大舞台で渡り合った経験がその後の強化の原動力になった。2026年はJユースカップでベスト8に進み、リーグでも首位を走る。
チームの歩み
創生期(2012年〜):高校サッカー王国での挑戦
- 2010年にU-15、2011年にU-12を発足させ、一貫指導の体制を整備。2012年にアカデミーの最上位カテゴリーとしてU-18が活動を開始
- 当時の長崎は国見高校を筆頭に高校サッカーの伝統が圧倒的で、有望な中学生の多くは強豪校へ進学していた。限られた選手数からのスタートだったが、トップチームと連動した戦術指導とプロを目指す専門的な環境を提供し、「Jクラブユース」としての存在感を少しずつ確立していった
黄金期(2021年):九州制覇とプレミア参入戦
- 2021年:プリンスリーグ九州で優勝。U-18創設からわずか10年での快挙で、クラブ史上初めてプレミアリーグ参入戦の出場権を獲得
- 2021年12月12日・参入戦の決定戦(エディオンスタジアム広島):相手は名門・前橋育英。前半と後半終了間際に失点し0-2で敗戦。プレミア昇格には届かなかったが、全国トップクラスと大舞台で戦った経験がアカデミーの現在地を示すマイルストーンとなった
現在
- 2026年:Jユースカップでベスト8(準々決勝でヴィッセル神戸U-18に0-1)。プリンスリーグ九州1部でも首位を快走し、悲願のプレミアリーグ昇格に向けて手応えのあるシーズンを送っている
育成システム:一貫指導と広域スカウティング
① U-12〜U-18の一貫したプレーモデル
U-12からU-18まで共通のプレーモデルを共有し、各年代で求められる技術的・戦術的要件がシームレスにつながる。アカデミーの練習拠点は長崎市内の人工芝グラウンドで、天候に左右されず年間を通して安定したピッチで、足元の技術と組織的なパスワークを落とし込める環境を確保している。
② 広域スカウティングで「疑似・全国大会レベル」の競争を
初期は県内のタレント発掘が中心だったが、近年はスカウト網を九州全域、さらに全国へ拡大。
- 内部昇格:V・ファーレン長崎U-15(鳥越朔太郎・岩永大翔ら)=クラブの理念と戦術の体現者
- 九州広域:セントラルFC宮崎(宮口裕多)、太陽スポーツクラブU-15(大田和)など
- 全国規模:JFAアカデミー福島(吉原希音)、セレッソ大阪西U-15、FC多摩JYなど
内部昇格組がチームのアイデンティティを保ち、全国から集まったタレントが競争を加速させる。この構図が、日常のトレーニングを「疑似的な全国大会レベル」に引き上げている。
③ 「今を生きる楽しさを」——燃え尽きさせない育成
過度なプレッシャーによるバーンアウトを避け、「楽しさ」と「人間的成長」を土台に長期的なキャリアを築かせるという思想が、アカデミー全体に流れている。ピッチ内外で自律して行動できる「真のアスリート/フットボーラー」の育成が最終目標だ。
輩出した主なプロ選手
- 安部 大晴(MF、ホルシュタイン・キール=ドイツ2部):長崎県初の「現役高校生Jリーガー」として2022年にプロ契約を結んだアカデミーの至宝。U-20ワールドカップを経験し、2025年にFCルツェルン(スイス)へ移籍。2026年6月にドイツ2部のホルシュタイン・キールへステップアップした
- 江川 湧清(DF、V・ファーレン長崎):アカデミー育ちの左利きセンターバック。トップ昇格後にガンバ大阪へ移籍し、2025年に長崎へ復帰。J1の舞台で最終ラインを牽引する
- 鍋島 暖歩(MF、V・ファーレン長崎):U-18卒業後に東洋大学で研鑽を積み、2026年にトップチームへ加入。大卒ルーキーながら定着し、プロ初ゴールも記録した
- 七牟禮 蒼杜(FW、高知ユナイテッドSC):2024年にトップ昇格。期限付き移籍を経て2026年6月に高知へ完全移籍
- ほかにも、五月田星矢・西村蓮音・齋藤遼太・林田隆介ら多くのOBがプロの世界へ進んでいる
補足:プロ選手の現所属クラブは移籍により頻繁に変動します。最新の所属情報はJリーグ公式や各クラブ公式でご確認ください。
→ 特徴的なのが「アジア・ルート」の活用。国内で出場機会が限られる若手を、シンガポール(アルビレックス新潟シンガポール、FCジュロン)や台湾のリーグへ送り出して実戦経験を積ませ、成長して戻ってくるキャリアパスを設計している。10代で欧州へ渡る安部大晴のようなエリート層、大学経由で逞しくなって帰還する鍋島暖歩のようなルートと合わせ、キャリアの選択肢が多様なのがこのアカデミーの強みだ。
2026年の注目選手
- 宮口 裕多(FW、セントラルFC宮崎出身):プリンスリーグ九州1部で9得点(第9節終了時点)を挙げ、得点ランキング首位を独走。左足の精度と背後への抜け出しが武器で、第9節・鹿児島城西との首位攻防戦でも活躍した
- 立石 珠子(GK):185cmの正守護神。的確なコーチングとシュートストップで最終ラインに安定感をもたらす
- 鳥越 朔太郎(MF、V・ファーレン長崎U-15出身):生え抜きのチャンスメーカー。右サイドやハーフスペースからの突破に優れ、3得点
- 岩永 大翔(MF、V・ファーレン長崎U-15出身):中盤からゲームをコントロールし、スルーパスで前線を操るプレイメーカー(2得点)
- 大田 和(DF、太陽スポーツクラブU-15出身):対人守備の強さに加え、セットプレーのターゲットとしても機能し2得点
- 吉原 希音(DF/MF、JFAアカデミー福島出身):U-17Jリーグ選抜のドイツ遠征にも選出された次世代のホープ
※学年はJFA等で公表されていないため個別には記載していません(出典:クラブ公式・ゲキサカの選手データ/リーグ戦の得点記録)。
2026年プリンスリーグ九州1部 序盤戦
| 節 | 日付 | 対戦 | H/A | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| 第1節 | 4/4 | vs 東海大学付属熊本星翔高校 | H | ○ 3-1 |
| 第2節 | 4/11 | vs FC琉球U-18 | H | ○ 4-0 |
| 第3節 | 4/18 | vs 国見高校 | A | ○ 3-1 |
| 第4節 | 4/25 | vs 大津高校2nd | A | ○ 3-0 |
| 第5節 | 5/2 | vs 日章学園高校 | A | ○ 4-3 |
| 第6節 | 5/5 | vs ロアッソ熊本U-18 | H | ○ 1-0 |
| 第7節 | 5/9 | vs 東福岡高校 | H | ● 2-3 |
| 第8節 | 5/16 | vs 飯塚高校 | A | ○ 2-1 |
| 第9節 | 7/11 | vs 鹿児島城西高校 | H | ○ 3-2 |
→ 第9節終了時点で8勝0分1敗・勝点24、プリンスリーグ九州1部の首位(25得点11失点・得失点差+14)。開幕から6連勝で走り、第7節の東福岡戦ではセットプレーから失点を重ねて2-3の逆転負け(今季唯一の黒星)。しかし引きずることなく立て直し、台風で延期になっていた第9節・鹿児島城西との首位攻防戦(7月11日)を3-2で制して単独首位に立った。
ビハインドや接戦をものにする勝負強さが今季の持ち味で、宮口裕多(9得点)を軸に、鳥越朔太郎・岩永大翔・大田和と複数の選手が得点に絡む。2位・鹿児島城西とは勝点2差。悲願のプレミアリーグ昇格へ、後半戦の直接対決が最大の焦点になる。
※試合結果・順位は高校サッカードットコム(koko-soccer.com)のプリンスリーグ九州1部ページを出典に照合。本サイトの順位データとも一致(第9節終了時点)。順位は毎日の自動更新で最新化されます。