チームの特徴
興國高校サッカー部は、1964年創部、大阪市天王寺区にある男子校のサッカー部。2006年に就任した内野智章監督(現スーパーバイザー)が、部員わずか12名の無名チームから「個の技術と戦術眼の極大化」という高体連では異色の哲学を貫き、数十名のプロサッカー選手を輩出する育成機関へと育て上げた。セレッソ大阪とパートナーシップを締結し、同クラブのコーチがスタッフとして指導に加わる点も特徴的である。
スタイル: 「テクニックと判断を大切にし、攻撃も守備も主導権を握って戦う」が明確なゲームモデル。内野監督が掲げた「根っこがなければきれいな花は育たない」という思想のもと、目先の勝利より足元の技術・個人戦術・判断力に膨大な時間を注いできた。2023年6月に就任した六車拓也監督(元Jリーガー、セレッソ大阪アカデミーでの指導経験を持つ)は、真面目で従順だった選手たちに「どうするべきか?」を絶えず問いかけ、ピッチ上の主体性と自立を促すアプローチを導入。後方からのビルドアップと個の打開力(ドリブル突破)を組み合わせ、選手のアイデアが最大限に発揮される流動的な陣形を採用している。トップチームには常時約60名が関わり、公式戦で30名以上が出場機会を得るという競争環境も独特だ。
主な実績
| 大会 | 実績 | 備考 |
|---|---|---|
| 全国高校サッカー選手権 | ベスト8(2025年度・第104回) | 過去最高成績。準々決勝で鹿島学園に1-3。大阪予選は6年ぶり2度目の優勝 |
| 全国高校サッカー選手権 | 初出場(2019年度) | 激戦区・大阪府予選を初制覇 |
| 全国高校総体(インターハイ) | 初出場(2024年) | 六車監督体制で創部初 |
| 高円宮杯 JFA U-18プリンスリーグ関西1部(2026) | 第9節終了時点 10位 | 1勝2分6敗・勝点5・11得点31失点(得失点差-20) |
→ タイトル数よりもプロ輩出数で日本の育成界に存在感を示してきた学校。トーナメントでの結果は近年になって伴い始め、2025年度の選手権ベスト8は「技術のチームは全国で勝てない」という通説を覆す成果となった。
チームの歩み
2006年〜:部員12名からの「個の育成」
- 2006年、内野智章監督が就任。当時は全国的な知名度が皆無で、部員はわずか12名。激戦区・大阪の予選を勝ち抜くことすら難しい状態だった
- 短期的な勝利を追わず、足元の技術・個人戦術・判断力を磨く長期ビジョンを掲げる。フィジカルと走力の強豪校に苦戦しながらも、「興國に行けば個の技術が伸びる」という評判が関西の小中学生・クラブ関係者に広がっていった
- 全国大会に出場できない時期からJリーガーを輩出し続け、「全国未出場なのにプロを出す高校」として全国的に注目される
2019年〜:結果が伴い始める
- 2019年度:大阪府予選を制して全国高校サッカー選手権に初出場
- 2023年6月:六車拓也が監督に就任。「主体性と決断力」を注入し、技術に勝負強さを加える
- 2024年:インターハイに創部初出場。Jヴィレッジで静岡学園などと対戦し、ボールを保持する「興國スタイル」を全国で展開
- 2025年度(第104回選手権):1回戦で帝京大可児を2-0で撃破し、2回戦の浜松開誠館をPK戦で突破。3回戦では東福岡に2点のビハインドを背負いながら後半アディショナルタイムに追いつき、PK戦(5-4)で勝利してベスト8入り。準々決勝で鹿島学園に1-3で敗れたものの、過去最高のベスト8
育成システム:クラブユース級の環境を高校の部活で
① 事実上の「中高一貫」ネットワーク
興國は高校単独の組織だが、セレッソ大阪U-15・RIP ACE SC・V・ファーレン長崎U-15など国内外のトップ育成組織と強固なスカウティング/育成ネットワークを構築。中学年代で高い技術と戦術理解を身につけたタレントが流入し、中高一貫アカデミーに匹敵する育成の連続性が担保されている。
② プロ級の指導体制と「アスリートアドバンスコース」
Jクラブアカデミーで指揮を執った指導者やJFA公認A級・B級ライセンス保持者、元プロ選手が多数在籍。GK専門・フィジカル・メディカルまで細分化された指導が行われる。競技力向上に特化した「アスリートアドバンスコース」により、学業と過酷なトレーニングの両立が可能になっている。
③ スペイン遠征(海外研修旅行)
複数班に分かれてマドリード・バルセロナを訪問し、現地の同年代チームと実戦を行うスペイン遠征が定着。リーチの長さから繰り出される予測不能なスピード、球際のインテンシティ、試合中の「ずる賢さ」を10代のうちに肌で感じることで、帰国後の国内でのプレー基準が劇的に引き上がる。
輩出した主なプロ選手
※重要:興國高校からは、サッカー部でプレーした選手と、セレッソ大阪U-18などのクラブに所属しながら興國高校に通っていた選手(アスリートアドバンスコース等)の2系統がプロになっています。ここでは混同を避けるため分けて掲載します。
サッカー部出身のプロ選手
- 古橋 亨梧(FW、バーミンガム・シティ=イングランド):日本代表。興國サッカー部→中央大→FC岐阜からキャリアを切り拓き、セルティックで得点を量産。2025年からイングランド2部のバーミンガムでプレー
- 和田 達也/永長 鷹虎/樺山 諒乃介/田川 知樹/村田 透馬/宇田 光史朗/西村 恭史/橋本 丈 ほか多数:全国大会に出場していない時期から、毎年のようにJリーガーを送り出してきた
興國高校卒(セレッソ大阪U-18などでプレー)のプロ選手
- 南野 拓実(MF、ASモナコ=フランス):日本代表の中心選手。セレッソ大阪U-18からトップ昇格し、ザルツブルク・リバプール・モナコへ
- 瀬古 歩夢(DF、ル・アーヴルAC=フランス):2026年ワールドカップ日本代表。セレッソ大阪U-18からトップ昇格、スイス・グラスホッパーを経てフランス1部へ。両足から放つロングフィードが武器の「ボールを持てるセンターバック」
- 北野 颯太(MF/FW、レッドブル・ザルツブルク=オーストリア)/中島 元彦/西尾 隆矢/松本 凪生/杉本 健勇 ほか:セレッソ大阪のアカデミーで育ち、興國高校に通った選手たち
補足:プロ選手の現所属クラブは移籍により頻繁に変動します。最新の所属情報はJリーグ公式や各クラブ公式でご確認ください。
→ 全国大会に一度も出たことがない時期からコンスタントにプロを輩出してきたのが興國の最大の特異性。「勝てなくても、プロになれる」という育成の一点突破が、いま選手権ベスト8という結果にもつながっている。
2026年の注目選手
- 大賀 康生(FW):163cmと小柄ながら高い得点感覚とアジリティを武器にする攻撃の核。セレッソ大阪U-18戦でも得点
- 徳原 天仁(FW):180cmの恵まれた体躯を活かす前線のターゲット。近江戦の2得点、三田学園戦のゴールなどチームの得点源
- 西村 凪隼(MF):中盤でのボールキープと決定的なミドルシュートに優れ、神戸弘陵戦では劇的な決勝点
- 光延 輝心(FW/MF):突破力が武器。神戸弘陵戦・阪南大高戦でゴール
- 比嘉 蓮(V・ファーレン長崎U-15出身)/石川 遥大(MF):石川は強豪・京都橘戦で一矢報いるゴールを記録
※学年はJFA等で公表されていないため個別には記載していません(出典:ゲキサカのリーグ戦記録・選手データ)。
2026年プリンスリーグ関西1部 序盤戦
| 節 | 日付 | 対戦 | H/A | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| 第1節 | 4/5 | vs 京都サンガF.C. U-18 | H | ● 0-6 |
| 第2節 | 4/12 | vs 三田学園高校 | A | △ 1-1 |
| 第3節 | 4/18 | vs 履正社高校 | A | ● 0-1 |
| 第4節 | 4/25 | vs 神戸弘陵学園高校 | H | ○ 3-2 |
| 第5節 | 4/29 | vs セレッソ大阪U-18 | A | ● 1-3 |
| 第6節 | 5/4 | vs 阪南大高校 | H | △ 2-2 |
| 第7節 | 5/10 | vs 大阪産業大学附属高校 | H | ● 0-6 |
| 第8節 | 6/14 | vs 京都橘高校 | A | ● 1-4 |
| 第9節 | 6/20 | vs 近江高校 | H | ● 3-6 |
→ 第9節終了時点で1勝2分6敗・勝点5、関西1部の10位(11得点31失点・得失点差-20)。31失点はリーグワーストで、京都サンガF.C. U-18戦(0-6)・大阪産大附戦(0-6)・近江戦(3-6)と大量失点の試合が目立つ。ボールを保持して主導権を握るスタイルは、プロクラブのアカデミーやトランジションに勝る高体連の強豪に対して構造的なリスクを抱えている。
一方、第4節・神戸弘陵戦の逆転勝利(西村・光延・比嘉)や、近江戦での徳原の2得点など、個の打開力と連動したパスワークで強固なブロックを崩すシーンは確実に作れている。下級生がプレッシャーの強い公式戦で結果を残していることは来季以降の大きな財産で、「勝敗以上に、トップレベルでのエラーと成功体験の反復」を重視する興國らしいシーズンとも言える。9月の再開後、残留に向けて勝点を積み上げられるかが焦点。
※試合結果・順位は高校サッカードットコム(koko-soccer.com)のプリンスリーグ関西1部ページを出典に照合。本サイトの順位データとも一致(第9節終了時点)。順位は毎日の自動更新で最新化されます。