チームの特徴
富士市立高校サッカー部は、静岡県富士市の市立高校(=公立)のサッカー部である。前身は富士市立吉原商業高校で、2011年に富士市立高等学校へ改称され、総合探究科・ビジネス探究科・スポーツ探究科が設置された。
藤枝東・清水東・静岡学園といった中部の名門校が長く牽引してきた「サッカー王国」静岡にあって、富士市立は県東部から出てきた公立校という位置づけにある。その核となるのが、杉山秀幸監督が2010年に設立したNPO法人「富士スポーツクラブ」である。下部組織「FC Fuji ジュニアユース」を立ち上げ、中学年代から高校まで6年間同じコンセプトで選手を育てる中高一貫型の育成モデルを作り上げた。
スタイル: チームスローガンは「今こそ遊びがものをいう」である。ドリブルとショートパスの技術を磨き、意表を突いたプレーで相手の逆を取る「遊び心」を推奨するスタイルを掲げる。杉山監督は「ゆっくりと、じっくりとボールを大事にしながらサッカーをする」という言葉でこのスタイルを語っている。
主な実績
| 大会 | 実績 | 備考 |
|---|---|---|
| 高円宮杯 JFA U-18プリンスリーグ東海 | 2019年に初昇格、以降2026年まで8年連続在籍(降格経験なし) | 最高順位は2022年の4位。同年のリーグ得点王は同校の山藤大夢(16得点) |
| 全国高校サッカー選手権 静岡県大会 | 2019年度 準優勝(同校初の決勝進出) | 決勝は静岡学園に1-6で敗戦 |
| 全国大会(選手権本大会・インターハイ本大会) | 出場はまだない | — |
| 高円宮杯 JFA U-18プリンスリーグ東海(2026) | 第9節終了時点8位 | 3勝0分6敗・勝点9(前半戦) |
チームの歩み
部員12人の時代から
杉山秀幸監督は、前身の富士市立吉原商業高校時代の1990年代後半に監督へ就任した。就任当時を杉山監督は「当時は部員が12人という時期もあった」と振り返っており、決して恵まれた環境ではなかった。当時、県東部で育った有力な中学生選手が、進学先として中部の強豪校を選ぶ流れが強く、富士市立(吉原商業)はその中で苦しい時期を過ごしていた。
FC Fuji ジュニアユースの創設(2010年)
「自前で選手を育てなければチームに未来はない」という考えのもと、杉山監督は2010年にNPO法人「富士スポーツクラブ」を設立し、下部組織「FC Fuji ジュニアユース」を立ち上げた。中学年代から高校まで同一コンセプトで育てるパイプラインを構築したことが、その後の躍進の土台となった。
2019年の飛躍
その後、富士市立は静岡県リーグを勝ち上がって臨んだプリンスリーグ東海の参入戦を突破し、2019年にプリンスリーグ東海へ初昇格を果たした。初挑戦となった2019年は7位(勝点21・6勝3分9敗)で残留を果たしている。同じ2019年度の全国高校サッカー選手権静岡県大会では決勝に進出して準優勝(決勝は静岡学園に1-6)を収め、同校にとって大きな飛躍の1年となった。
育成システム
NPO法人富士スポーツクラブ(2010年設立・杉山監督が代表)が「FC Fuji ジュニアユース」を運営しており、代表は池谷哲志氏が務める。中学年代から高校まで同一コンセプトで選手を育てる仕組みが、そのままチームの土台になっている。
その規模は数字にも表れている。部の公式メンバー表に掲載されている2学年分・100名のうち、24名がFC Fuji ジュニアユース出身である。出身チームは60団体に分かれており、2番目に多いクラブでも3名にとどまることを踏まえると、FC Fujiが突出した供給源になっていることが分かる。2026年のトップチームで得点を挙げた佐野響・志田悠斗・八木徹・四条赳琉・庵原進太も、いずれもFC Fuji出身である。
部の規模は総部員数約160名(女子・マネージャーを含む)に及び、TopTeamから6thTeam、Ladies Teamまでのカテゴリー編成を持つ。TopTeamがプリンスリーグ東海、2ndTeamが静岡県ユースCリーグ、それ以下のカテゴリーは東部ユースリーグを戦っている。
施設は学校敷地内に整備されており、13,797m²の全面人工芝サッカーコート1面とフットサルコート2面、夜間照明を完備する。富士山を一望できるロケーションも特徴である。
部員が裏方業務を担う「チームアシスタント」制度もあり、トレーナー部/ITプロモーション部/マネージメント部/栄養管理部/コーチアシスタント部の5部門で構成される。この活動を通じてJFA4級審判員やJFA公認D級・C級コーチライセンスの取得も可能となっている。
地域との関わりも深く、多世代交流サッカーは2012年に学校の地域交流課が開始し、2025年春からはNPO法人富士スポーツクラブが運営を受託している。毎月第2・第4金曜に開催され、事前予約は不要で、4〜5歳から60代までの幅広い世代が参加する。「指導はせず楽しむ場」というルールのもとで運営されているのが特徴である。
学科としてはスポーツ探究科を設置しており、2024年11月には元Jリーガーの中村亮氏を招いた特別講演会「セカンドキャリア教育・スポーツで海外に進出する」を実施している。
指導体制
杉山秀幸監督(1973年4月29日生まれ・静岡県出身)が2026年現在も指揮を執る。2008年のSBS杯国際ユースサッカーでは静岡ユースの監督も務めた。
輩出した主なプロ選手・OB
松澤海斗(シント=トロイデンVV/ベルギー1部)
2001年2月5日生まれ。スポーツ探究科6期生で、同校サッカー部初のJリーガーである。名古屋経済大学を経て2023年にV・ファーレン長崎へ加入し、2025年夏にベルギー1部のシント=トロイデンVVへ完全移籍した。2026年8月現在も同クラブに所属しており、ポジションはMF・背番号38である。
山﨑絢心(藤枝MYFC → タンピネス・ローバーズFCへ期限付き移籍中)
2007年6月25日生まれ。FC Fuji ジュニアユース出身で、2026年3月に富士市立高校を卒業して藤枝MYFCへ加入した。2026年7月1日から2027年6月30日までの期限付き移籍で、シンガポール・プレミアリーグのタンピネス・ローバーズFCでプレーしている。ポジションはアタッカー。高校時代にはU-17日本高校選抜候補にも名を連ねた。
富士市立からのプロ輩出は、2026年8月現在、確認できる限り、松澤海斗と山﨑絢心の2人から始まった新しい歴史である。2026年FIFAワールドカップ日本代表26名に同校OBの選出はない。
なお、混同されやすい点として、川口能活は静岡県富士市の出身だが、出身高校は清水市立商業高校(現・清水桜が丘高校)であり、富士市立高校のOBではない。中田英寿・大岩剛についても同校OBではない。
補足:プロ選手・指導者の所属は異動により変動する。最新の情報はJリーグ公式サイトなどでご確認いただきたい。
2026年の注目選手
攻撃陣の中心は遠藤壮大(JSC CHIBA出身)で、チーム総得点15のうち7点を挙げている。宇都宮大志(バンデリージャ横浜出身)も3得点を記録し、攻撃をけん引した。
2026年 プリンスリーグ東海の得点者
| 選手 | 学年 | 得点 | 内訳 |
|---|---|---|---|
| 遠藤壮大 | 3年 | 7 | 第2節・浜松開誠館戦1、第5節・三重戦3、第6節・藤枝東戦1、第8節・愛工大名電戦2 |
| 宇都宮大志 | 3年 | 3 | 第1節・東海大翔洋戦1、第5節・三重戦2 |
| 佐野響 | 3年 | 1 | 第3節・静岡学園戦 |
| 志田悠斗 | 3年 | 1 | 第7節・藤枝明誠戦 |
| 八木徹 | 3年 | 1 | 第8節・愛工大名電戦 |
| 庵原進太 | 2年 | 1 | 第9節・帝京大学可児戦 |
※このほか第7節・藤枝明誠戦で相手のオウンゴールが1点あり、選手の得点14+オウンゴール1=チーム総得点15と一致する。
佐野響・志田悠斗・八木徹はいずれもFC Fuji出身である。第9節・帝京大学可児戦では、GK山本潤人、DF佐藤恵太・八木徹、MF佐野響・四条赳琉、FW志田悠斗・庵原進太と、先発11人のうち7人をFC Fuji出身者が占めた。
そのほかの主なメンバー
| 選手 | 学年 | ポジション | 出身チーム |
|---|---|---|---|
| 山本潤人 | 3年 | GK | FC Fuji |
| 佐藤恵太 | 3年 | DF | FC Fuji |
| 髙田琉生 | 3年 | DF | FC目黒 |
| 額川幸太郎 | 3年 | — | FCヴェレン大洗 |
| 中村瑛太 | 3年 | — | FC ALASERIO |
| 四条赳琉 | 2年 | MF | FC Fuji |
| 鈴木カシオ大志 | 2年 | — | アスルクラロ沼津 |
※ポジションは第9節(帝京大学可児戦)のメンバー表によるもので、記載のない選手は「—」としている。卒業生は含めない。
なお、庵原進太は2025年12月のU-16日本代表エジプト遠征メンバーに選ばれている。
2026年プリンスリーグ東海 前半戦の戦績
| 節 | 日付 | 対戦相手 | スコア | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| 第1節 | 4/4 | 東海大翔洋(A) | 1-5 | ● |
| 第2節 | 4/11 | 浜松開誠館(H) | 1-4 | ● |
| 第3節 | 4/18 | 静岡学園(A) | 1-4 | ● |
| 第4節 | 4/25 | 清水エスパルスユース(H) | 0-6 | ● |
| 第5節 | 5/2 | 三重 | 5-4 | ○ |
| 第6節 | 5/5 | 藤枝東(H) | 1-4 | ● |
| 第7節 | 5/9 | 藤枝明誠(A) | 2-0 | ○ |
| 第8節 | 6/13 | 愛工大名電(A) | 3-1 | ○ |
| 第9節(延期分) | 7/11 | 帝京大学可児 | 1-3 | ● |
→ 総括:第9節終了時点で3勝0分6敗・勝点9、プリンスリーグ東海8位(10チーム中)。15得点31失点・得失点差-16。開幕から4連敗と苦しいスタートとなったが、第5節・三重戦を5-4で制して今季初勝利を挙げると、第7節・藤枝明誠戦は2-0で完封勝ち、第8節・愛工大名電戦も3-1と勝ち星を重ねた。9試合で引き分けが1つもなく、勝つか負けるかがはっきりした前半戦であった。後半戦は第10節(9月5日・東海大翔洋戦)から再開する。最新の順位はプリンスリーグ東海で確認できる。
※試合結果・順位は本サイトの順位データ(毎日自動更新)およびJFA公式記録と照合済み(第9節終了時点)。
静岡県内での戦い(2026年)
2026年度 静岡県高校総体(インターハイ静岡県予選)では、2回戦で浜松工に5-0で勝利(得点は宇都宮大志2、額川幸太郎、四条赳琉、中村瑛太)したものの、3回戦で聖隷クリストファーに0-1で敗れた。優勝は静岡学園である。
2026年 静岡県高校新人大会では、1回戦で加藤学園に6-1、2回戦で富士見に10-0と勝ち上がったが、3回戦で常葉大橘に1-1(PK3-5)で敗退した。優勝は静岡学園である。
2025年度 選手権静岡県大会では、決勝トーナメント1回戦で飛龍に1-1(PK7-8)で敗れている。優勝は浜松開誠館であった。
静岡県内は静岡学園・浜松開誠館・藤枝東ら強豪校がひしめく激戦区であり、富士市立にとって全国への道は依然として険しい。